農地に関するお話し

~農地に関するお話し~

農地(畑・田)を処分(売買や贈与など)する場合、許可を受けなければ処分ができません。今回は農地の処分についてお話しします。

1.農地法

農地法は、農地及び採草放牧地の取り扱いについて定めた法律です。田、畑などが減ってしまうと食料自給率に影響があるため農地の自由な処分を制限しています。

昭和27年に制定され、農地の勝手な転用を防止するための規定を設け、優良農地の確保と土地の有効活用とのバランスを図ることがその主たる目的となっています。

2.農地法の許可の種類

農地法第3条の許可・・農地を農地のまま移転する場合

農地法第4条の許可・・農地を他の用途に変更する場合(所有者は変わらない)

農地法第5条の許可・・農地を他の用途に変更したうえで移転する場合

*市街化区域(どんどんビル建てましょうという地域)においては、第4条、第5条は「許可」ではなく「届出」でOKです(届出なので手続きすれば必ず受理されます)。

3.地目と現況の関係

畑や田であった土地を宅地や雑種地に用途変更した場合、法律上は登記簿の地目を変更しなければなりません。しかし多くの所有者はそのことを知らないため登記簿の地目を変更していないことが多々あります。

(例)【地目と現況の関係図】

  地目 現況
宅地
宅地
宅地 宅地

 

4.具体例

実務上は市街化区域の農地であるケースが多いため、以下の事例を用いて説明します。

ア)売買により市街化区域の農地所有権移転登記を申請する

イ)市街化区域の農地のため農地法5条の届出を行う

ウ)時系列

令和5年2月1日 売買契約締結

令和5年2月8日 農地法5条の届出受理

①・③について

現況が農地であるため農地法の制限がかかります。③のように地目が宅地でも、それは所有者が地目変更登記を怠っているだけなので農地法の対象外とはなりません。処分するには通常通り農地法の届出が必要になります。

農地は農地法の届出が受理された日に所有権移転の効力が生じます。

よって、所有権移転の効力は2月8日に生じるため登記原因は「令和5年2月8日売買」となります。

②について

このケースでは現況が宅地であるため農地法の制限が生じるのか疑問が生じますが、結論から申し上げると所有権移転登記においては農地法第5条の届出を行う必要があります。

農地法2条では農地の定義を次のように定めています。

(農地法第2条) 

この法律で「農地」とは、耕作の目的に供される土地をいい、「採草放牧地」とは、農地以外の土地で、主として耕作又は養畜の事業のための採草又は家畜の放牧の目的に供されるものをいう。

現況が宅地のため本来は農地法の射程外なのですが、地目が畑である以上、法務局には現況が非農地か否か判明しないため、農地法5条の届出したことを証する書面(「受理通知書」といいます)を添付する取り扱いになってます。

上記の理由を鑑みると、受理通知書を添付すること自体には合理性があるのですが、問題は所有権移転の効力発生日です。

現況が農地ではないため実体上の所有権移転の効力は売買契約時に生じており、登記原因は「令和5年2月1日売買」となるのが帰結と考えます。

ところが、私が「令和5年2月1日売買」で所有権移転登記を申請した際に、法務局から「令和5年2月8日売買」に修正するよう補正を求められました。

農地法2条を見ても、農地法の対象はあくまで「農地」であり、現況が宅地で地目が農地のままの土地は対象外のはずです。

登記申請に際し、農地法5条の受理通知書を添付するのは法務局の書面のみの審査方法を補充することが目的のはずです。

理屈を説明したのですが、受け入れてもらえず、結局は「令和5年2月8日売買」に補正しました。

実体上の権利変動(所有権移転の効力発生)を反映させるのが登記手続のはずですが・・・。

④について

地目、現況とも農地ではないため農地法の問題は一切生じません。

このように農地に関する登記手続きは非常に神経を使います。

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