登録免許税の免税措置のお話し
~登録免許税の免税措置のお話し~
令和3年4月1日より相続登記における登録免許税の免税措置が拡大されました。この改正により相続登記の税負担が軽減されます。
登録免許税とは
そもそも登録免許税とは何かを簡単に説明いたします。登録免許税とは登記手続きの際に納める税金です。
売買、抵当権設定(抹消)、住所変更など登記記録を変更しようとするときには、この登録免許税を申請と同時に納付しなければ手続きしてくれません。
登記記録を変更してもらうための手数料といった感じです。
そのため司法書士事務所に登記を依頼する場合の費用は下記①~③の合計となります。
① 登録免許税
② 司法書士の報酬
③ 実費(郵送料、書類取得費など)
私はいつも登記手続の費用は車検と似ています、とお客様に説明します(車検費用の方が多くの方にとって身近ですから車検でたとえてます)。
10万円程かかる車検代も半分ほどは税金(法定費用)で、一部がディーラーさんの報酬ですよね。
登録免許税の額
登録免許税は、登記の種類により決まっています。①市区町村が発行する評価証明書記載の評価額を基準とするものと②不動産一個につき一律1,000円のものがあります。
税率は以下のとおりです。
(例) 売買→評価額×2%(土地は1.5%)
贈与→評価額×2%
相続→評価額×0.4%
抵当権抹消・住所変更→不動産1個につき1,000円
例えば2,000万円の土地1筆について次の登記をする場合、登録免許税は以下のとおりとなります。
売買する場合 2,000万円×1.5%=30万円
相続する場合 2,000万円0.4%=8万円
抵当権抹消もしくは住所変更する場合 1,000円
余談ですが、我々司法書士は、報酬と登録免許税の総額を費用として頂戴し、司法書士が責任をもって登録免許税を納付します。
売買の登記の場合、不動産総額が3,000万円であれば登録免許税だけで45万円となります。お客様から「司法書士さんは儲かりますね」と言われることがございますが、費用のほとんどは税金だったりします笑
相続の登録免許税免税
令和3年4月1日から令和7年3月31日までの間、相続登記における登録免許税が下記のとおり免税されることになりました(期間は延長される可能性あり)。
相続で承継した100万円以下の土地については登録免許税を課さないこととされました(相続が絡む建物の保存登記も一部対象ですが今回は割愛します)。
要件は
① 相続を原因とする名義変更であること
② 100万円以下であること
*ただし評価額が200万円の土地であっても被相続人の持分が2分の1なら移転する価格は100万円となりますので適用あります。
*マンションの敷地についても土地であるため適用あります。
③ 土地であること(建物には適用なし)
東京では自宅の土地が評価額100万円以下ということは少ないと思います。ただ、土地というのは見た目は1筆ですが、法律上は2筆に分かれていることがあります。その場合、小さい方の土地は評価額が100万円以下ということもありえます。
また自宅の前面道路を所有している場合、道路部分の評価額は低いため免税適用の可能性が高いといえます。
例えば2,000万円、100万円、80万円の3筆の土地について相続登記する場合、登録免許税は以下のとおりとなります。
【免税がない場合】
ア) 2,000万円×0.4%=8万円
イ) 100万円×0.4%=4,000円
ウ) 80万円×0.4%=3,200円
→合計8万7,200円
【免税ある場合】
ア)2,000万円×0.4%=8万円
イ)100万円×0.4%=4,000円
ウ)80万円×0.4%=3,200円
→合計8万円
イ)とウ)の土地は免税対象となり7,200円登録免許税が安くなります。
以前からも免税措置はありましたが、一部の土地に限定されていて、限度額も10万円以下とされていました。
この優遇措置は、相続登記の義務化におけるアメとムチだと考えます。相続登記を義務にする(ムチ)代わりに、税金を優遇する(アメ)ので相続登記してくださいね、という趣旨だと思います。
本制度の注意点
本制度の免税を受けるためには要件を満たすことはもちろんのこと、登記申請の際に免税を受ける旨を申請書に記載し、かつ免税後の登録免許税を納める必要がございます。
免税の制度を知らず、通常の登録免許税を納めた場合、法務局からは「登録免許税減らせますよ」という連絡はなく、登記手続きは完了してしまいます。
優遇措置を受けることを望まない者には通常通り登録免許税を課す、ということなのです。
相続登記を申請する際には、登録免許税について十分にご注意ください。