戸籍の附票のお話し

~戸籍の附票のお話し~

司法書士事務所に入所し相続登記を担当する際、多くの方が最初に戸惑うのが戸籍等の収集業務だと思います。

司法書士試験では戸籍の収集、読み取りについては学習しません。そのため実務についてから勉強することになります。

戸籍収集業務において理解するのが難しいのが「戸籍の附票」です。今回は戸籍の附票についてお話しします。

1.戸籍の附票とは

戸籍の附票は「住民票の兄弟」です。名前に「戸籍」の文字が入っていますが、あくまで住所を証する書面です。

2.住民票と戸籍の附票の違い

ア)住民票(本籍地入り)

・現在の住所及び一つ前の住所が記載されている

・希望すれば(現在の)本籍地を記載可能

・住所地の市役所で取得可能

イ)戸籍の附票

・本籍地が記載されている

・当該本籍地における住所の履歴がすべて載っている

・本籍地の市役所で取得可能

イメージ図

【住民票(本籍地入り)】

氏名:飯田太郎

住所:八王子市松木一丁目1-1

本籍:立川市緑町二丁目2-2

【戸籍の附票】

本籍:立川市緑町二丁目2-2

氏名:飯田太郎

住所:八王子市松木一丁目1-1

青梅市野上町一丁目1-1

日野市豊田一丁目1-1

*青梅市野上町一丁目1-1→ 一つ前の住所

日野市豊田一丁目1-1→ 2つ前の住所

このように両者はあべこべの関係になります。

・住民票(本籍地入り)・・住所に本籍地が載ってくる

・戸籍の附票・・本籍地に住所が載ってくる

両者に共通しているのは、一つの公的書類に住所と本籍地が記載されており、住所と本籍地を結びつけることができる点です。

3.本籍地の必要性

登記手続きにおいて、なぜ本籍地が必要になるのでしょうか。それは被相続人の住所と本籍地を繋げるためです。これは登記官の立場に立つと分かります。

【前提条件】

ア)戸籍には本籍地しか載っていない。

イ)住民票(本籍地なし)には住所しか載っていない

ウ)登記簿には住所・氏名しか載っていない

次のような登記簿があったとします。

権利部(甲区) (所有権に関する事項)
順位番号 登記の目的 受付年月日・受付番号 権利者その他の事項
 1 所有権移転 平成10年8月13日

第12345号

所有者

八王子市松木一丁目1-1

飯田太郎

 

事例としては、所有者である飯田太郎に相続が開始し、相続人は長男の飯田次郎のみであるため登記簿の名義を飯田次郎に変更する相続登記を申請したとします。

登記手続きに際し、戸籍と住民票(本籍地なし)を提出したとすると、提出した書類から読み取れることは『この度、本籍地が立川市緑町二丁目2-2の飯田太郎が死亡しました。相続人は長男の飯田次郎だけなので、飯田次郎に不動産の名義を変更してください』ということです。

登記官としては、当然『本籍地が立川市の飯田さんが死亡したこと及び相続人が飯田次郎だけであることは戸籍から分かりましたが、本籍地が立川市の飯田さんと登記簿上の住所が八王子市の飯田さんは同一人物なのですか?』『同一人物であることが証明できなければ同姓同名かもしれないので受け付けられません』となってしまいます。

そこで住民票(本籍地入り)もしくは戸籍の附票の出番なのです。

前述のとおり、両者とも一枚の書面に住所と本籍地が記載されてますので、本籍地が立川市の飯田と住所が八王子市の飯田は同一人物であることが証明できます。そのため住民票(本籍地入り)もしくは戸籍の附票を提出すれば名義変更を受理してもらえます。

ちなみに、次のケースでは、本籍と住所を繋げる必要はありません。

1.住所と本籍が同一である場合

1.被相続人の過去の本籍地のいずれかが登記簿上の住所と同一である場合

4.いずれを取得するべきか

住民票(本籍地入り)は住所地の市役所で、戸籍の附票は本籍地の市役所でそれぞれ取得するので、市役所が異なる場合は近い方の市役所で取得できます。

被相続人の住所が判明している場合は、住民票(本籍地入り)を(実務上はこのケースが多いです)、被相続人の本籍地が先に判明している場合は戸籍の附票を取得することになります。

ただし、住民票は一つ前の住所のみ、戸籍の附票は同じ本籍地での移転したすべての住所が載ってくるので、前記の事例で登記簿上の飯田の住所が仮に青梅市野上町一丁目1-1だとしたら、住民票(本籍地入り)には2つ前である青梅市の住所は載ってこないため住所と本籍地が繋がりません。その場合は、戸籍の附票を取得する必要があります。

このように両者を使い分けて使用することが大切です。

5.戸籍の附票の注意点

令和4年1月11日から戸籍の附票には請求しなければ、本籍地が記載されないことになりました。

戸籍の附票を請求する際には、必ず本籍地を入れる旨を記載して請求してください。

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